広報しらかわ 2017.12(H29) 3
特
集
鳥獣被害対策
~農作物を 生活を
守る
ため~
農
林
作
物
の
鳥
獣
被
害
が
後
を
絶
ち
ま
せ
ん
。
狩
猟
人
口
減
少
な
ど
の
影
響
に
よ
り
、
野
生
動
物
の
個
体
数
が
増
加
し
た
た
め
だ
と
考
え
ら
れ
て
い
ま
す
。
今
月
号
で
は
、
有
害
鳥
獣
と
日
々
戦
う
「
白
河
市
鳥
獣
被
害
対
策
実
施
隊
」
と
、
市
の
対
策
事
業
に
つ
い
て
特
集
し
ま
す
東分隊隊長
東地域ではカラスによる被害が最も多く、葉物野菜 や果物の食害に限らず、ブロッコリーの苗などを、植 えているそばから引っこ抜いてしまうようなイタズラ もします。また、ハクビシンによるトウモロコシの食 害や、カモが田植え後の苗を倒す被害も出ています。 隊長が被害や目撃情報をもとに市の担当者と打ち合 わせ、捕獲許可申請などを行います。隊の活動は、土 日早朝5時30分から7時まで行い、隊員はその日の 被害状況に応じて、3~4人1組で各捕獲場所に向か います。しかしカラスの数は年々増えていて、いくら
深
ふ か谷
や吉
よ し正
ま ささん 隊長歴11年(隊員歴46年)隊の存続が心配です
若い世代の方の入隊を
捕獲しても被害が減らないのが現状です。
安全面から、隊員の活動範囲には限りがあります。 住宅地や自宅の敷地内などでは、電気柵やわなの設置 など、皆さんの自衛による対策をお願いします。 隊員の高齢化が進み、隊の存続が心配です。若い方 にも関心を持ってもらい、隊に加わってもらえればと 思います。また、隊員は地域の役に立ちたいという思 いで活動しています。早朝の活動となりご迷惑をお掛 けしますが、ご理解とご協力をお願いします。
※わなの設置には、原則わな猟免許取得が必要です。
※ 大信地域では、東日本大震災に伴う原発事故以来、
イノシシの目撃や被害がかなり増えました。特に、モ チ米やジャガイモ・カボチャの食害が多いです。 狩猟期間以外は、2名体制で毎日パトロールをして います。各地に仕掛けたわなを3日おきに見て回った り、連絡のあった被害者のもとに駆け付け、被害状況 の調査や捕獲方法を確認したりします。必要であれば、 被害対策のアドバイスもします。
イノシシの捕獲では「くくりわな」を使用します。 小さな仕掛けを踏むことでワイヤーに足を取られる仕
経験から得た知識を伝え
捕獲技術向上に努めたい
組みなので、少しでも位置がずれるとわなは作動しま せん。けもの道はもちろんのこと、イノシシの生態や 歩き方・歩幅に至るまで熟知していないと、捕獲する ことはできません。これまでの経験から得た知識を、 研修会などで市内外の方に伝える活動もしています。 鳥獣被害対策には、鳥獣の住みかをなくすことが大 切です。自宅周りや農地に、餌となる残飯や野菜くず などを放置しない、農地と山林原野の境界の下刈り除 草を行う、電気柵を活用するなど、皆さんのご協力を お願いします。
松
ま つ本
も と広
こ う吉
き ちさん 隊長歴20年(隊員歴55年)大信分隊隊長
表郷分隊隊長
「鳥獣捕獲は一人でできるものではなく、仲間とい かに協力して行うかが大事」だということを、50年 の狩猟経験から学びました。隊長として日頃から「隊 員の輪」を大切にしています。
表郷地域では、社やしろ川が わの南側を中心にイノシシやカラ スの被害が多く、食害のほか、イノシシは土手や田畑 を荒らしたり、車との接触事故も起きていて、大変危 険です。カラスは牛の背中をつついて怪け
我が
を負わせた りもします。そのため、隊員は土日を中心に2人1組 でパトロールを行い、捕獲活動をします。被害には至
小
お山
や ま定
さ だ男
お さん 隊長歴3年(隊員歴7年)実施隊の活動に対する
ご理解をお願いします
りませんが、シカやサルの目撃情報も寄せられていま すので、今後は、それらの生態や活動場所も勉強しな ければならないと感じています。
農作物被害を減らすために、有害鳥獣捕獲は欠かせ ません。実施隊の捕獲活動により、田畑・山林や民家 近くでも大きな発砲音が聞こえますが、隊員は必ず矢 先を確認して発砲するようにしています。発砲音がす ると危険だと感じる方もいるかと思いますが、民家方 向には絶対に発砲しませんので、ご安心いただければ と思います。
白河分隊隊長
友人の父から猟銃を譲り受けたのをきっかけに狩猟 を始め、隊員になりました。被害に遭った現場を見る と、本当にひどいものです。「1人でも多くの農家さ んの役に立ちたい」という思いから、今まで活動して きました。
白河地域ではイノシシとハクビシンによる被害が多 いため、小田川方面と白坂・旗宿方面に分かれ、週4 回2~3人体制で、約120か所に仕掛けたわなの確認 を中心にパトロールしています。
近年、住宅の庭先でも、家庭菜園の作物やユリの球
渡
わ た邉
な べ正
ただしさん 隊長歴12年(隊員歴34年)鳥獣被害は増える一方です
なんとかしなければ
根などを狙いに来たイノシシが目撃されています。人 的被害につながる恐れもありますので、自己防衛を心 掛けてください。菜園周りに紐ひ も
を張るだけでも効果が あります。ぜひお試しください。
狩猟人口の減少に伴い、鳥獣個体数は増え続けてい ます。繁殖力も強くなっているので、被害は増える一 方です。また、隊員の高齢化が進んでいます。若い世 代の方が加わらないと、隊の活動を維持するのが難し くなります。何か対策を打たなければならないと感じ ています。
広報しらかわ 2017.12(H29) 4 広報しらかわ 2017.12(H29)
5
市
の
有
害
鳥
獣
捕
獲
に
よ
る
捕
獲
数
鳥獣被害対策実施隊 市内4分隊
被
害
・
目
撃
情
報
通
報
か
ら
実
施
隊
の
活
動
の
流
れ
分隊長に聞く
《カラス捕獲数》 《ハクビシン捕獲数》 《イノシシ捕獲数》
※東地域は、H27に1頭のみ。 ※県事業により捕獲した数は含まない。
大信 96
3 45
26 55 126
24 1
東 東
100 10
150
12
180(羽) (頭) (頭)
(年度) (年度) (年度)
80 8
120 60
6 90
40 4
60
20 2
30
0 0
0
白河 白河
白河 表郷
表郷 大信
※表郷・大信地域は、H25 ~H28に おける捕獲実績なし。
※東地域が多い傾向にある。 ※被害報告に基づき捕獲許可を出すた め、捕獲実績のない年もある。
①
市
へ
被
害
・
目
撃
情
報
の
通
報
②
担
当
職
員
に
よ
る
聞
き
取
り
調
査
③
担
当
職
員
と
隊
長
(
隊
員
)
が
現
場
を
確
認
④
捕
獲
活
動
が
で
き
る
地
区
(
鳥
獣
保
護
区
・
特
定
猟
具
使
用
禁
止
区
域
以
外
)
で
あ
る
こ
と
を
確
認
後
、
市
が
鳥
獣
捕
獲
許
可
を
出
し
、
隊
員
に「
鳥
獣
捕
獲
従
事
者
証
」
を
交
付
⑤
実
施
隊
が
捕
獲
活
動
を
行
う
⑥
市
に
報
告
す
る
た
め
捕
獲
状
況
(
日
に
ち
・
場
所
・
数
な
ど
)
を
記
録
し
、
焼
却
・
埋
設
に
て
処
分
今年4月に「白河市鳥獣被害対策実施隊」と名称を改めた市内4分隊。 市と隊員との連携を強化するため、市職員も隊員に加わり、より一層の 鳥獣捕獲推進を図っています。時に命がけで捕獲活動を行う実施隊の各 隊長に、被害の現状と活動内容などについて聞きました。
助成事業活用者に聞きました 助成事業活用者に聞きました
仁
に平
へ い英
ひ で敏
と しさん ■狩猟免許取得のきっかけ義理の叔父の影響です。以前から たびたび叔父の狩猟に同行し、捕獲 した野鳥を使った料理を食べたりし ていたので、興味がありました。 ■免許を取得して
試験日や会場が限られるため、仕 事をしながら免許を取るのは大変で したが、費用面での助成はありがた かったです。また、試験に関する情 報が無く不安でしたが、銃砲店の方 が詳しく教えてくれたので助かり
ました。この経験から、狩猟に興味 を持った方が何から始めたらよいか、 何にどれだけ費用と時間がかかるの か、インターネットなどで気軽に調 べられると、若い方も始めやすいの ではないかと思いました。
■今後の目標
隊員の高齢化など、実施隊が抱え る問題は叔父からも聞いています。 いつか私も隊員として地域の役に立 てるよう、これから狩猟経験を積ん でいきたいと思っています。
いつか隊員として活動したい
第一種狩猟免許取得
■電気柵設置前の被害状況は? ここ2、3年は特に被害が多く、 ジャガイモ・トウモロコシ・米・ユ リの球根…。一年中被害に遭ってい ました。サツマイモの収穫時期には、 毎晩のように畑が荒らされたことも ありました。
■電気柵を設置してみて
ソバを20アール(約2,000㎡)栽 培していますが、イノシシの被害に よりほとんど収穫できませんでした。 電気柵を設置してから、被害はあり
ません。また、電線を地表近くから 張ることにより、ハクビシンやタヌ キなどの被害も防げました。
電気柵はとても効果があるので、 周りの農家さんも設置を検討してい るようです。
■市の電気柵購入助成事業について 電気柵はとても高価なので、市が その購入費用の一部を助成してくれ るのは、大変助かります。申請方法 も分かりやすく、設置を進めるきっ
かけにもなりました。
鈴
す ず
木
き茂
も吉
き ちさん電気柵の効果は大きい
電気柵設置
広報しらかわ 2017.12(H29) 6 広報しらかわ 2017.12(H29)
7
電
気
柵
購
入
費
用
の
3
分
の
1
を
助
成
狩
猟
人
口
増
加
の
た
め
狩
猟
免
許
取
得
費
用
を
助
成
狩
猟
免
許
取
得
か
ら
実
施
隊
隊
員
に
な
る
ま
で
実
施
隊
に
よ
る
捕
獲
活
動
に
加
え
、
被
害
の
多
い
農
地
・
農
業
施
設
な
ど
に
電
気
柵
を
設
置
す
る
こ
と
で
、
被
害
を
抑
え
る
こ
と
が
で
き
ま
す
。
市
で
は
昨
年
度
か
ら
、
市
内
の
農
林
作
物
生
産
者
を
対
象
に
、
電
気
柵
購
入
経
費
の
3
分
の
1(
上
限
額
は
5
万
円
・
千
円
未
満
切
り
捨
て
)
を
助
成
し
、
普
及
に
努
め
て
い
ま
す
。
昨
年
度
は
24
件
、
今
年
度
は
60
件
の
申
請
が
あ
り
ま
し
た
。
な
お
、
今
年
度
の
申
請
受
付
は
終
了
し
て
い
ま
す
の
で
、
助
成
を
希
望
さ
れ
る
方
は
、
来
年
度
以
降
の
申
請
を
お
願
い
し
ま
す
。
環
境
省
に
よ
る
と
、
昭
和
50
年
に
約
52
万
人
い
た
全
国
の
狩
猟
免
許
所
持
者
は
、
平
成
7
年
に
約
25
万
人
と
半
減
し
、
そ
の
後
も
減
少
し
続
け
、
平
成
26
年
に
は
約
19
万
人
と
な
り
ま
し
た
。
県
猟
友
会
白
河
支
部
の
会
員
数
も
5
年
前
と
比
べ
て
2
割
以
上
減
り
、
平
成
28
年
度
は
1
2
0
人
で
し
た
。
こ
の
影
響
で
、
イ
ノ
シ
シ
な
ど
の
野
生
鳥
獣
が
増
加
し
、
農
作
物
な
ど
の
被
害
は
増
加
の
一
途
を
た
ど
っ
て
い
ま
す
。
こ
う
し
た
危
機
的
状
況
を
食
い
止
め
よ
う
と
、
市
で
は
今
年
度
か
ら
、
捕
獲
の
担
い
手
と
な
る
人
材
の
確
保
の
た
め
、
新
た
に
狩
猟
免
許
を
取
得
し
た
方
を
対
象
に
、
そ
の
免
許
取
得
に
か
か
っ
た
費
用
(
講
習
会
受
講
料
・
狩
猟
免
許
試
験
申
請
手
数
料
)
の
全
額
助
成
を
開
始
し
ま
し
た
。
ま
た
、
県
で
も
、
40
歳
未
満
の
方
を
対
象
と
し
た
若
手
狩
猟
者
確
保
事
業
な
ど
を
行
っ
て
い
ま
す
。
免
許
取
得
を
検
討
中
の
方
は
、
こ
れ
ら
の
事
業
を
ぜ
ひ
ご
活
用
く
だ
さ
い
。
市
で
は
、
農
林
作
物
の
被
害
対
策
や
、
狩
猟
に
関
す
る
相
談
を
随
時
受
け
付
け
て
い
ま
す
。
お
気
軽
に
お
問
い
合
わ
せ
く
だ
さ
い
。
問
本
庁
舎
農
林
整
備
課
内
2
2
2
9
市の被害対策
増え続ける鳥獣被害の対策事業として、市では、昨年度から電気柵購入経費の一部助成を行っています。さらに今年度から、狩猟人口の増加を図るため、銃やわななどの狩猟 免許取得費用の助成を始めました。
▲水田周りに設置した電気柵
各
講
習
会
や
試
験
は
、
県
内
で
年
に
数
回
開
催
さ
れ
ま
す
。
猟
銃
所
持
許
可
取
得
ま
で
に
は
時
間
が
か
か
り
ま
す
の
で
、
狩
猟
免
許
取
得
と
並
行
し
て
進
め
る
必
要
が
あ
り
ま
す
。
ま
た
、
取
得
免
許
や
所
持
猟
具
の
種
類
に
よ
っ
て
手
続
き
方
法
な
ど
が
異
な
り
ま
す
。
詳
し
く
は
、
各
機
関
に
お
問
い
合
わ
せ
く
だ
さ
い
。
狩
猟
免
許
取
得
猟
銃
所
持
許
可
取
得
問
県
南
地
方
振
興
局
県
民
生
活
課
☎ 1 5 4 8
問
白
河
警
察
署
☎ 0 1 1 0 ❶
狩
猟
免
許
試
験
初
心
者
講
習
会
の
受
講
受
講
料
4
、0
0
0
円
❷
狩
猟
免
許
試
験
狩
猟
免
許
は
、
猟
法
ご
と
に
4
種
類
あ
り
ま
す
。
▽
第
一
種
銃
猟
免
許
(
散
弾
銃
・
ラ
イ
フ
ル
銃
)
▽
第
二
種
銃
猟
免
許
(
空
気
銃
)
▽
わ
な
猟
免
許
▽
網
猟
免
許
手
数
料
各
免
許
に
つ
き
5
、2
0
0
円
❸
狩
猟
免
状(
免
許
)取
得
①
猟
銃
等
講
習
会
の
受
講
受
講
料
6
、8
0
0
円
②
講
習
終
了
証
明
書
交
付
③
射
撃
教
習
資
格
認
定
申
請
手
数
料
8
、9
0
0
円
④
射
撃
教
習
資
格
認
定
証
交
付
⑤
射
撃
教
習
費
用
約
3
0
、0
0
0
円
⑥
教
習
終
了
証
明
書
交
付
⑦
猟
銃
所
持
許
可
申
請
手
数
料
1 0 、5 0 0
円
⑧
猟
銃
所
持
許
可
証
交
付
⑨
猟
具(
猟
銃
・
わ
な
・
網
)
の
所
持
⑩
狩
猟
者
登
録
お
よ
び
福
島
県
猟
友
会
に
入
会
登
録
手
数
料
1
、8
0
0
円
+
福
島
県
猟
友
会
入
会
金
狩
猟
税
▽
第
一
種
銃
猟
(
所
得
に
よ
る
減
額
あ
り
) 1 6 、5 0 0
円
▽
第
二
種
銃
猟
5
、5
0
0
円
▽
わ
な
・
網
猟
(
所
得
に
よ
る
減
額
あ
り
)
8
、2
0
0
円
※
こ
の
ほ
か
、
損
害
賠
償
保
険
加
入
な
ど
が
必
要
で
す
。
《
狩
猟
経
験
3
年
以
上
》
※
わ
な
猟
免
許
取
得
者
は
、
こ
の
限
り
で
は
な
い
⑪
福
島
県
猟
友
会
白
河
支
部
の
推
薦
◎
実
施
隊
入
隊
銃猟免許取得後 の射撃練習経費 助成あり (上限 10,000 円) 40 歳未満を対
象とした、狩猟 を始めるための 経費助成あり (上限 40,000 円)
助成あり
市
助成あり
市
県
県
猟銃所持許可取 得のための経費 助成あり (上限 30,000 円)
県
狩猟を始めるまでには、各種手続き に約10万円かかりますが、そのほとん どを市や県の助成でまかなうことがで きます。